代表取締役 谷口 一人

日本の暮らしの知恵やライフスタイルそのものを輸出したいと思う。

今回、TAKATRANSを始めるにあたって、キーワードとして、〈Japanese way of life〉という言葉を挙げています。モノを並べてただ売るということではなくて、日本の知恵や暮らし方、そういうことをモノを通して紹介していく。日本のライフスタイルそのものに興味をもっていただく。その思いを〈Japanese way of life〉という言葉に込めています。アジア各国の生活をもっと豊かに、楽しくするために私たちは仕事をする。モノの集積を見せたいということではなく、〈Japanese way of life〉を、モノを通して紹介することで、アジアの暮らしに根付かせたい。そういった強い思いがあります。

かつて髙島屋がニューヨークで店舗を運営していた当時、クロスカルチャーというキーワードがありました。日本の文化の産物であるモノを、アメリカの生活文化とクロスさせる、そういった意味です。実際、アメリカの風景の中に日本のモノを置いた時、非常に新しく見えた。とても印象的でした。今度はその時の経験をアジアの国々の暮らしの中で生かす。クロスカルチャーをより進化させて新しい生活の仕方、ライフスタイルを提案したいと考えています。

いま日本は平和な時代が70年間続いています。その間には経済成長があったが、その経済成長も平和だからこそ実現でき、モノの文化が成長できたという側面がある。その中で日本人が元々、持っているこだわりの感性が研ぎすまされ、育まれて、今に至っているわけです。そして現在は、20年前の日本のモノや、考え方とは全くちがう新しいライフスタイルやモノが生まれている。平和を背景にした日本の成長の成果、それが現在の日本のライフスタイル〈Japanese way of life〉につながっている。だからこそ、かつての日本と同じように経済成長の渦中にいるアジアの国々、そこで暮らす新しい世代、〈Japanese way of life〉というライフスタイルに興味を持つ人たちへ発信していきたいですね。

日本というのは面白い国で、世界中の文化を吸収するのが得意です。たとえばある家庭のある日の食卓に餃子と焼き鳥とカレーが並んでいたりする。それぞれの料理はオリジナルとは別物だが、日本人にとってはフツウのこと。これは日本独自の食のスタイルですね。dish washerもそうです。日本の食洗機は、茶碗と大皿と小皿、小鉢とか様々な形の食器を洗えなければ成立できない。それがアメリカの場合、平たいお皿とカップが並べば大体OKとなる。つまり、日本では食洗機を設計する時も、様々な工夫が必要になってくる。dish washerそのものは西洋的な文化とも言えるが、日本では工夫がいる。そういう知恵、ノウハウを活用して、アジア各国の生活にマッチするモノを創り、改良し改造する、それが私たちの仕事だと思います。生活を便利にする食洗機も、その国の食生活に合ったモノでないと意味がないですからね。ある日本のモノがあって、そのモノが、日本の独自性をもっているか、グローバルに通用するポテンシャルがあるか。いいモノを見つけるために、創っている人たち、企業と心が通い合う友好関係を築く。それが第一歩です。ただどういったモノにフォーカスするかは決めないといけない、そう思っています。先ずは食の分野。それから人の生活に密接なモノ、家庭用品の分野。育児用品、肌着ひとつとっても、日本にはいいモノがあるわけですから、子供たちの人口が増えているアジアエリアにとっては、子供に関連したモノ、ベビーグッズ等はきっと需要があるはずです。加えて、デザインやアートの世界もあるでしょう。

髙島屋は老舗のイメージが強いと思いますが、実は振り返ってみると、常に新しいコトにトライしてきた歴史があります。そもそも古着屋としてスタートして、木綿商になり、呉服店になり、それから明治時代には、貿易商。そして百貨店となった経緯がある。戦前には現在の百円ショップに似た、十銭ストアのような取り組みも行っていました。つまり、ずっと時代と共に、生活者の近くから発想してきたわけです。他にもアーティストをサポートしながら、生活の中に文化を取り入れる事業等、そういう経緯があって今に至っている。その時代の社会のニーズに応えながら業態を変えてきた。全ては社会のニーズに対応した結果です。

そういった髙島屋のDNAは生かすべきだと思っています。単に高級品を売る百貨店という意味ではなく、その時代の社会のニーズに応えるDNA。もちろん、髙島屋ブランドはアジア地域でも知名度があるので、そのブランド資産を生かしながら、目利きの部分、いいモノを選ぶ審美眼を大切にしたい。なぜ、このモノをTAKATRANSが扱うのか。その意味はどこにあるのかということを、常に確認しなくてはと考えています。なぜ、コレをTAKATRANSが取り上げたのか。常に自問するべきです。日本の取引先の方にとっても、TAKATRANSを通して輸出することが、どういった意味があるのかと。そこは明確にしたいと思っています。

髙島屋が培ってきた、目利きの部分、それを生かしながら、ただ単純にモノを動かすだけではなくて、ひとつの店そのものを輸出したいという思いです。そして現地の小売店に対して、品揃え、売り方、ノウハウといったコトを紹介していきたいのです。店の中の商品のメンテナンス等、いわゆる問屋機能、それもまた私たちが掲げる〈Japanese way of life〉の一部です。いずれにしてもその時、その時で変わることができるエネルギーは大切だと思うのです。変化のエネルギーは人も企業も活性化させるものですから。